
海外売春やメンズエステなどで稼ぐ
ホストクラブの悪質な営業等や、トクリュウ(匿名・流動型犯罪グループ)の資金源となる風俗店のスカウトバックを規制した改正風営法が昨年の6月に施行されて1年以上が経過した。改正の効果は出ているのか。風俗ジャーナリストの生駒明氏が、業界関係者を取材して検証した記事の【後編】だ。
「風営法改正後、海外売春や違法な同人ビデオへの女性の紹介が確実に増えました。業界全体のアンダーグラウンド化が進んでしまっています」(風俗向けコンサルティング会社幹部)
’25年の風営法改正により、性風俗店のスカウトバックは禁止となった。だが、海外売春、同人ビデオへの出演、メンズエステ、出稼ぎ先としての地方風俗店への紹介のスカウトバックは、以前と変わらないどころか増加しているという。
「海外売春は収入はいいが、本番が基本なうえ、1日の接客回数が日本よりも多い。外国なので安心・安全面でのリスクも高い。最近は売春を疑われて入国できないケースも増えており、旅費が無駄になることもあります」(同前)
海外売春がしたい女性、性風俗で働きたい女性は、法改正後も風俗店への女性の紹介を続けるトクリュウのスカウトのもとに集まるようになった。
一方、性風俗への紹介をやめたスカウトは、女性をメンズエステに紹介するようになった。メンズエステは表向きは風俗店ではないため、スカウトバックの規制の対象外となっているからだ。
「メンズエステはたびたび摘発されていますが、数自体は減っていません。最近は”メンズエステ=フーゾク”と捉える人が多くなりました。サービス内容も過激化したことで、客数が増えて需要が拡大し、供給が追いつかないぐらいです。
女性さえ集まれば簡単に始められるし、フーゾクより広告費が安いから、初期費用が比較的少なくて済む。なかには自分たちで開店するスカウトもいます」(大手風俗グループ幹部)
「意外と摘発されない」という印象を持っている人が多く、素人の参入障壁が低いのだという。 風営法の改正では、メンズエステが摘発されたときの罰則が大幅に強化された。一時は「メンズエステは壊滅するのでは」と噂されたこともあったが、フタを開けてみれば、性風俗で稼ぎたい女性たちの貴重な受け皿となっていた。
色恋営業と売掛金が禁止となったが…
法改正の原因となった、ホストによる女性客からの搾取は改善されたのだろうか。大手ホストクラブに勤める有名ホストに話を聞いた。
「スカウトの紹介や売り掛けなどの悪質な営業行為は、小さな店舗ではまだ残っているところもありますが、大手グループでは完全に禁止されました。しかし、ホストクラブでの支払いのためにフーゾクで働きはじめる女性はいまもいます。
変わったのは、女性客がスカウトを通さずに性風俗店に入店するようになったことぐらい。もともと直接入っている女性のほうが多かったのですが、より数が増えましたね。風営法が改正される前から、ホストが女性にスカウトを紹介するケースはそこまで多くなかった。スカウトから紹介料をもらっていた少数のホストが困っただけですね」 色恋営業の禁止によるデメリットも特にないという。
「ホストクラブはSNSで”推し”を作ってそれにお金を使う”自発的な応援”という形に変わってきています。なので、恋愛感情があるように見せておカネを使わせる色恋営業を禁止してもあまり意味がありません。色恋営業をしないホストは昔からいますしね」(有名ホスト) むしろ、売り掛け禁止によってホストクラブにクリーンなイメージがついたことで、OLなど昼間に働いている女性の来店が増えているという。ここでも法改正の効果は限定的だったようだ。
キャバクラ業界がトクリュウの資金源に
「キャバクラがスカウトを切ることは考えられない。在籍女性の7割前後がスカウト経由だから。今でもほとんどの店で付き合いがあると思う。特に六本木と歌舞伎町はトクリュウのスカウト集団が盛んに活動している」(都内有名キャバクラ店長)
’25年の法改正によるスカウトバック禁止の対象は性風俗であり、キャバクラは規制の対象ではない。キャバクラ業界はトクリュウの”稼ぎ場”と化しているという。
トクリュウと名指しされたスカウトグループ『ナチュラル』の売り上げの約7割が、社交飲食店から受け取るスカウトバックだといわれている。風営法を改正して性風俗店を取り締まっても、社交飲食店のスカウトバックをなくさない限り、トクリュウを壊滅に追い込むのは難しいという。
「キャバクラ業界のスカウトバックは、女性の毎月の売り上げの10%が基本。15%ほど取る性風俗より利率こそ低いが、業界の規模が大きく、多くの店が支払っている」(同前)
「トクリュウとの付き合いを続けないと、女性の採用に困ります。都内の某有名店の採用はトクリュウが独占しているといわれています。業界を健全化したいのなら、トクリュウの取り締まりと、トクリュウ所属のスカウトを通さない人材確保の方法の構築を同時に行うしかないでしょう」(別のキャバクラ経営者)
キャバクラがスカウトを使用するメリットは大きい。スカウトはレベルの高い女性を紹介してくれるため、店の売り上げは明らかに良くなる。また、スカウトが女性の面倒を見てくれるので、女性が仕事を頑張るようになるという。
「法改正で色恋営業が禁止されたが、キャバクラでは何も変わっていない。キャストも客も変化なし。改正後も歓楽街に来る客足は減ってない」(前出・都内有名キャバクラ店長) 風営法の改正は、キャバクラ業界とスカウトの結び付きをより強めただけだったようだ。
警察は「効果を発揮している」
「もともと性風俗業界は健全化の方向に進んでいたのですが、法改正により逆流してしまいました。ホストクラブの売り掛けを理由にフーゾクをやっている女性なんて少数派だったのに……」(前出・コンサルティング会社幹部)
一部の悪質なホストやトクリュウへの対策のために実施された風営法の改正。しかし、事態は改善するどころか、違法な組織に流れる資金が増えて“本末転倒”となっている。
行政はどう捉えているのだろうか。AV新法の成立に関わった足立康史・参議院議員はこう話す。
「警察は“改正風営法は効果を発揮している”と言っています。スカウトバックを抑え込んで、相当なお金の動きを止めることができた、と。性風俗全体のスカウトバックのボリュームが減少しているので、トクリュウも抑え込めているという認識です」
しかし、性風俗業界からは「違法なスカウトバックの総量は減っていない」という意見が多数寄せられている。前述の通り、違法なメンズエステへの人材紹介が増えていることも、その要因の一つだ。
現状のままでは、性風俗だけでなく、社交飲食でもトクリュウが跋扈(ばっこ)すると見られている。そんな危険な状況が続けば、どちらの業界も今以上に地下化してしまうだろう。
改正風営法施行から1年余りが過ぎた現在、業界関係者は「余計なことをしてくれたものだ。むしろマイナスだ」と口々に言う。”業界の健全化”を達成するための抜本的な対策が今、求められている。
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